一昔前までは、小さな生活道具から家具、建築に至るまで、身近に手に入る杉で何でも作られていました。今も残る杉でつくられた古いものの、大事に使い続けられ、磨かれ手入れされてきた時間がつくる風合いの美しさにははっとするものがあります。
杉にこだわったものづくりは最近ではめずらしいようですが、
杉山に囲まれたところで制作活動をする僕たちにとって、そこに豊富にある材を地産地消の姿勢で使うことは昔と同じようにごく自然なことなのです。

杉を扱い続けることで、素材の性質や特徴、品種の違いなどの詳細までも理解するようになります。まっすぐに通った木目、材色は樹皮に近いところは白く、内部は黄、橙、赤、茶、こげ茶色まで様々。きめの細かい材質で光沢のある滑らかな肌触り。年輪の堅さの違いを生かした割り肌や、焼杉、うづくりといった独特の表情。こんな多様な特徴を持つ杉への興味はより深くなり、それを生かしたものづくりが、益々面白くなっています。そして杉で出来ることがまだたくさんあることにも気づき、ものづくりの幅も広がっています。

また、杉が本来持っている個性を生かすことは、自分の作品への作為的な表現を抑え、無理な個性づけを避ける助けにもなります。 昔の人のものづくり、特に庶民の作った庶民のための素朴で簡素、実用的なものづくりに共感する僕たちにとっては制作時に気をつけていたいことです。

さらに素材の入手のしやすさ、広葉樹に比べ乾燥時間が短いこと、加工がしやすく、狂いにくいことも、高度な技術を持たない僕たちには、とても扱いやすいのです。
自由な発想で杉材ならではの加工法を自分なりに工夫し、暮らしの道具を生み出すのはとてもやりがいがあります。



about us 溝口伸弥(ミゾグチ シンヤ)
1970年北九州市生まれ横浜育ち
多摩美術大学建築科卒業
設計事務所勤務を経てものづくりの道へ


溝口陽子(ミゾグチ ヨウコ)
1973年福岡市生まれ
国際基督教大学語学科卒業
日本語教師を目指すが手仕事に魅かれ木工を始める